日本では尊厳死は法律上認められていませんが、では海外で尊厳死できますか?
昨年末、尊厳死宣言公正証書の作成相談において、このような質問を受けました。昨年11月、アメリカで20代の女性が自ら死を選択したことで、日本のみならず世界においても尊厳死に注目が集まった時期です。当該女性は悪性の脳腫瘍のため余命6ヶ月との診断を受けていました。
さて、当事務所での相談内容について詳細は明かせませんが、ざっくり言えば上記女性と同様にまだ意識のはっきりしている状態からの死の選択といったところです。「海外で許されるのなら、海外で死にたい」とのこと。このようなことでお悩みの方も多いのかもしれないと考え、考察の上、トピックにしてみます。福岡の行政書士として、もっぱら身近な企業法務や民事法務しか取り扱っておらず、当事務所は渉外関係の業務も行っていないので、誤りがあるかもしれませんが、ご参考程度にお読みください。
日本人が海外で尊厳死
まず、尊厳死は日本では法律上認められていませんが、逆に言うと、国によっては認めているところがあるということです。スイスの「ディグニタス」等が簡単に検索でも上がってきますし、上記アメリカの女性においても尊厳死が州で許容されていたとのことです。
では、日本人がそれらの地域に行って尊厳死を行えるのでしょうか?
国内法は、簡単に言うと日本においてしか適用されません。例外的に海外でも及ぶものもありますが、尊厳死に関わるような自殺・自殺ほう助といったものは例外には当てはまらないところです。つまり、日本での決まりにおいては、日本人は海外で尊厳死することに制限はありません。
次に、海外の医療機関等が尊厳死を認めるのでしょうか?
現在、日本における尊厳死の実態としては回復の見込みのない延命治療の拒否であり、一般的に、そこには意識がない状態というのが前提としてあるように思われます。上記20代の女性のように、意識がある中で死を選ぶことができるのは、さすが尊厳死を選べる国は違うなと考えさせられます。とはいえ、尊厳死を認めている地域であっても、本当に回復の見込みのない状態なのか・精神疾患等は尊厳死に認められない等、尊厳死の認定は厳しいようです。
さらに、尊厳死の認定には、そういった地域に在住であることが要件であったり、日本から訪れた者が安楽死の処方を受けるまでにはかなりのハードルがあると思われます。尊厳死が実現するまでの関係機関との調整であったり、死後の遺体・遺骨の移送であったり、国をまたぐが故の難題も山積するでしょう。健康な状態なら認定を受けることは難しいですし、逆に、健康でない状態なら体力的に調整していくことが難しくなります。
過去に、日本人が海外で尊厳死をしたという報告もゼロだと言われており、おそらく現実的には実現が難しいものではないでしょうか。