車庫証明がとれない!?

先月、車庫証明を受理してもらえないという案件がありました(納期には間に合いましたが)。

車庫証明の使用の本拠

福岡市の放課後等デイサービスの指定申請について、8月1日の指定に向けて申請代行業務を行っているところです。我ながら書類はきちんとそろえたので、6月の上旬には、早々に福岡市こども未来局での書類チェックも済み、あとは現地調査を待つのみとなりました。本件は、それにあたり、放課後デイで送迎に使用する車を法人名義に変えることになった際のことです(さしあたって、車庫証明が必要)。

スケジューリングが早く進んだのも、当然、お客様が準備に協力的だったからでもあり、車庫証明代行は日ごろからやり慣れている業務でもあるので、意気揚々と「車庫証明はサービスで私がやりますよ」と言った時には後の祭り。この時はまさか車庫証明が受理されないことになるとは想像もしていませんでした。こうやっていきがった時に限ってトラブるものです…。

さて、このトラブルは、車庫証明における「使用の本拠」ということについて考えさせられました。ちなみに、依頼者は福岡市内にすでに指定事業所(一号店)を持っており、このたびは、新たに福岡市南区に放課後等デイサービス(二号店)の立ち上げです。もちろん、法人の本店(登記上の所在地)は二号店(福岡市南区)の住所地ではありません。こういった場合、車庫証明においては、二号店(福岡市南区)の住所地を使用の本拠として申請します。添付書類として、二号店(福岡市南区)の住所地の所在証明を添付して申請ればよい話です。ここまではいつも通りであり、想定の範囲でした。

ところが、放課後デイがあまりにも早く準備が進んだため、車庫証明において適当な所在証明がほとんどない状況でした。唯一出てきたのが、電話回線の設置工事の領収書。所在証明としてはまあ悪くない書類ですが、これを添付して申請したのが運の分かれ目だったと思います。警察の窓口で「いつから開業なの?」という話に波及してしまい、「まだ人が常駐していない場所を使用の本拠と認めることはできない」という、まさかの受理されない結果になりました。悪意のある申請でもありませんし、警察とのやり取りで押しきれないことはない案件だとは思いますが、事業所のシャッターが常時閉めっぱなしなのも少し引っかかり、正直な回答をしてしまいました。

さて、こういった場合、「自動車がないとそもそも開業ができないと認められる事業」であれば車庫証明は受理されるらしいのですが、警察がその場で電話確認してくれた際の福岡市こども未来局の回答がなんと「自動車がなくても放課後等デイサービスは始められる」というものでした。いやいや、確かに自動車の有無は指定の要件ではありませんが、それは「靴がなくても外は歩ける」とか「箸がなくてもラーメンが食べられる」と同じような次元の理屈です。それどろか、放課後等デイサービスは送迎サービスによっても公金(介護給付費)を受けますし、自動車と放課後デイは制度上、切っても切り離せない関係のはずです。それがどうしたことか、警察からは「車庫証明としては使用の本拠として実態のない状態。倉庫と同じ」とまで言われ、何じゃそりゃです。お金を出して事業所と駐車場を借り、福岡市の指定申請は現地調査の前段階(内装が完全に済んだ状態)まで進んでいるのに「実態がない」とは…。事情を分かった役所同士が直接電話で話しているなら、どちらかの役所が話を通してくれればいいと思うんですけど…。

そこで、警察とは「使用の本拠として実態がないとはどういうことか」と交渉を続け、準備等で人が出入りするようになってから(7月半ばに)改めて車庫証明を出すことになりました。(車庫証明の有効期限が1か月ということもあり、6月半ばに取った車庫証明が、1か月経った時点で事業所に出入りがないというのは、看過できないということでもありました。)なお、放課後等デイサービスの指定申請としても、8月1日までに自動車を法人名義にできれば問題ないという着地点に至りました。そして、先日、無事に車庫証明が終わりましたが。

このあたりが行政書士業務の面白いところというか難しいところというか、例えば、6月の時点で多少ごまかして申請すればうまくいったかもしれません。ただし、それは制度上は虚偽に近い話になります。最も大切なことは、8月1日の期限に間に合うことであり、6月の時点で申請をねじ込むガッツではありません。関係窓口と誠実な交渉を行うところに行政書士の人柄とか倫理が表れるものだと思います。

ちなみに、上記の「電話回線の設置工事の領収書」は、車庫証明の所在証明としてだめな書類ではありません。本件としても、申請の時期を変えはしましたが、書類としては何も変更することなく申請をしました(所在証明として「電話回線の設置工事の領収書」を添付しました)。