酒類免許の賃貸借契約書

酒類免許申請の添付資料となる店舗の賃貸借契約書は特有のルールがあります。

 

所有者(A) ⇒ 不動産管理会社(B) ⇒ 借主(C)

例えば、建物には通常、上記のような権利関係があり、賃貸借契約書というものは通常、BC間について定めるものです。転貸借(また貸し)があればさらにCD間のような深い階層となります。※Aが併せて署名押印する場合もあります。

話が脱線しますが、不動産業(宅建業)は他人の不動産の売買・賃貸借のための営業であり、自己の所有する不動産を賃貸借する場合には宅建業免許は不要です。不動産の貸し借りは一般的に不動産会社を通して行いますので、上記でいうAC間で契約を結ぶことはとてもレアなケースです。

 

酒類小売業免許の審査が特別な点

酒類免許申請の審査において賃貸借契約書の取扱いが特有となるのは、まず次の2点があります。

  • Aが誰なのか、建物の登記簿謄本を示して明らかにする必要がある
  • 酒類小売業を行うことに承諾しているのかをAまで遡って確認する

 

次に、酒類免許において特有という理由は、次の通りです。

上記2点のポイントについて酒類免許申請の手引き等で示されていない

 

酒類免許申請の手引き等で示された通り賃貸借契約書のコピーしか提出しないと、審査の段階になってAの承諾について確認を求められることとなります。使用承諾というのは行政書士にとってのお客様(C)とは異なる第三者の話ですので、容易に判をもらえるのか見通しが立たないものです。容易かもしれませんが、容易でないかもしれません。このような困難なものが申請後に浮上してくるのは不意打ちパンチです。このため、当事務所では酒類免許申請の代行依頼を受けると、建物の登記簿謄本の確認と使用承諾書の手配を早急に行っています。なお、酒類免許申請書類のページでダウンロード提供しているものにはこの使用承諾書も入れていますよ。

 

ちょっと独り言ですが、先日、他の行政書士からこの件について質問を受けました。よくわかってらっしゃらなかったのか、改めて賃貸借契約書を作成したそうです。さて、賃貸借契約書はもともとBC間等で定めているものであり、酒類免許申請の代行依頼を受けた行政書士が申請に合わせて作成するものでありません。申請のための形だけだとしても、様々な条項を記載した文書に当人同士が判を押してしまうと、悪用や勘違いを生じる可能性があります。もともとが契約書として書面を交わしていない場合でも、酒類小売業の範囲に限定して代替え手段を模索するのが本論だと思います。

また、その行政書士から、作成した賃貸借契約書には押印・割印(契印)まできちんと押して提出したと聞かされましたが、それもまたおかしな話です。そもそも提出するのは賃貸借契約書のコピーであり、原本を提出することはあり得ません。当人同士が保管する重要書類について、原本を提出できてしまうのは立派なことではなく、逆に、怪しさ(酒類免許申請の為という目的で作成したこと)の裏返しです。なお、BC間の賃貸借契約書の契印は、BとCで押して効果のあるものです。Cの免許申請において、Bまでが押印することは求められておらず、逆に、Cだけの契印では意味を成しません。つまり、BCで契印した場合はやり過ぎであり、Cのみで契印した場合は足りないことになります。定款の写し等、申請者であるCが契印することで意味のあるものはありますが、賃貸借契約書はコピーしたものをホチキスで綴じる以上の必要はありません。よその事務所の危うさを感じた一コマでした。

 

酒類免許申請以外の店舗の使用権限の疎明

デリヘル営業開業届では、デリヘル営業を行うことについての使用承諾が必要です。一般的には、賃貸借契約書にそこまで具体的な記載がないことが多いので、賃貸借契約書と併せてデリヘル使用の承諾書を提出します。承諾者はA(所有者)でもB(管理者)でも構いません。建物の登記簿謄本の添付も不要です。

古物営業許可申請では、原則、賃貸借契約書のみでOKです。古物営業に使用するという目的が記載されていなくてもOKです。ただし、ネット販売等を行う場合は住居の一室である場合もあります。この場合、契約名義人と許可申請者が異なる場合があったり、住居契約に対し古物営業で使用してよいのか等の使用承諾書が別途必要です。なお、建物の登記簿謄本は不要です。

これら、許認可ごとにそれぞれの取扱いがありますが、やはり酒類免許において特異な点は、使用承諾の要否を申請後に知らされることですね。

 

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