一般建設業許可と承継

建設業を長年営んでこられ「そろそろ引退して、息子に代替わりしたい」というご相談があります。

ただし、いざ引退しようと思われる際にはご注意下さい。事業承継の際に建設業許可を失ってしまう可能性があります。

建設業の承継

建設業許可のお金の要件

法人と個人の許可の違い

まず、事業承継(代替わり)は、事業主体が法人であるか個人事業であるかによって異なります。

建設業許可を法人で取得している場合、許可を持つのはあくまで法人。息子さんへの代替わりは法人内部の話なので、許可の取り直しは発生しません。変更の手続き等で足りることになります。

しかし、建設業許可を個人事業で取得している場合は要注意です。親子であっても別の個人事業となるため、建設業許可の新規取得が必要になります。再取得でのハードルの1つは、建設業許可の新規取得の要件として「500万円の資金が必要になる」ということです。

つまり、個人の建設業許可の事業承継の場合、改めて500万円を準備しなければなりません。

資金調達

息子さんの実務経験

次に、建設業許可の人員に関する要件について。

なお、ここからは法人であれ個人であれ、建設業の人員要件について、「父親が抜けた穴を息子が埋められるか」という話です。

実務経験

さて、建設業許可では、専任技術者の要件を満たすためには1工事業につき10年の実務経験が必要です(なお、実務経験以外にも、資格や建築関係の学歴があれば話は別ですが)。

ここで、専任技術者については、10年勤務していれば自然と実務経験を満たすので、比較的クリアしやすい要件でしょう。

ただし、建設業許可申請においては、時間の経過だけでは満たされない要件があります。ここが、「事業承継のための準備」というポイントです!

建設業には経営管理責任者という要件があり、息子さんがどういう肩書で父親の経営を補佐してきたが問われます。なお、肩書とは会社内での呼び名の話ではなく、登記上の役職等となります。具体的には、息子さんは、法人ならば「取締役」、個人ならば「支配人」として登記しておかなければならず、登記されている期間が問われます。(同居の親子であれば専従者という肩書が使える可能性もあります)。

つまり、息子さんは、ただ会社に勤めるだけでなく、事業承継の7年前ないし5年前から登記をしておかないと、経営管理責任者の要件を満たせないのです。

登記

では、登記せずに普通に働かせてきただけという場合、どうなるのかというと、父親はまだ引退できないことになります。事業承継をして、息子さんが建設業許可を取得することはできますが、父親を経営管理者として働き続けさせなければなりません。

下図のように、事業承継をした後で、これから息子さんは経営経験を積んでいきます。その期間が満了する5年間ないし7年間は、父親はまだまだ引退できないということになります。

引退できないケース

結論として、建設業許可の承継においては、事業承継の前か後かに、5年ないし7年の準備期間が必要となりますので、早めの準備を心がけください。

なお、必要な期間が5年か7年かについては、建設業許可の申請内容によって異なります(ここでは説明を割愛します)。

建設業許可申請の山口行政書士事務所

④トピック編