資格ガイドなどを見ていると「行政書士になれば幸せになれる」というような甘い言葉が並んでいます。
ネット上には「行政書士で年収1,000万円」などのフレーズも飛び交っています。
ただし、一方では、士業は飽和していて、『もうすぐ消える職業ランキング』にもたびたび登場するようになりました。
行政書士が食べていけるのかは次章で解説するとして、このページでは、行政書士の開業前に、少し厳しい現実について体験談を交えてお話ししたいと思います。
行政書士で年収1,000万円
そんな素敵な言葉を、私が初めて目にしたのは、行政書士試験勉強中に書店へ参考書を買いに行った時のことでした。
参考書の片隅に、そのようなタイトルの開業ノウハウ本を見つけたのです。
その類のキャッチコピーは、今となっては『見慣れた日常風景』ですが、当時、参考書とばかり向き合っていた私にとっては、熱いサクセスストーリーに思えました。
そして、その本には、「行政書士になるとバラ色の生活が待っている」という話がたっぷりと書かれていました。
それは、試験合格を目指していた私にとってモチベーションをおおいに上げてくれるものでした。
なので、有益なことは何もなかったとは言いませんが、実際、自分が行政書士事務所を開業した後に待っていた現実はそんなに甘いものではなかったのです。
ちなみに、私はその手の話は嫌いではないので、他にも、高額なセミナーにお金をつぎこんでしまったこともあります。
ただ、そこで学んだことは『高いお金を支払っても、売上が上がる訳ではない』ということです。
本当に自分の力になることは、自分が経験を積んだり、泥をすすったりしながら身に付くものです。
普通に考えて、受講者が次々と年収1,000万円になるといううまい話はありません。
例えば、友達が「50万円払えば1,000万円になって返ってくるよ」という話にそそのかされそうになっていたらどうしますか?
「バカな誘いに乗っちゃいかん」と止めてあげますよね。
行政書士開業セミナー
さて、そういう誘いに心がゆらいでいる方にとって、一番気になるのが、そのセミナーの中身だと思います。
そこで、このページでは、私が体験したセミナーについて記載したいと思います。
まず、そういうセミナーに共通する売り文句として、「ライバルの行政書士は、勉強はできても営業力はない。営業に関しては、あなたが少し努力をするだけで敵なしになる」という文句をかましてきます。
ただし、実際、今、行政書士などの士業ビジネスは『激戦』と言われています。
当然、私も激戦だと感じているから、こんなにせっせとブログ書いているのです。
すごく遠回りなボディブローパンチですが、ブログを書くと、集客につながったりつながらなかったりなんですよ…って、そのからくりは後で解説するとします。
話を戻して、『ライバルが営業に疎い』という状況は一昔前ならそういうこともあったかもしれませんが、現在はもはや戦争です。
あなたが開業して土俵に上がれば、知識、人脈、経験、財力など、何においても自分より勝る先輩ばかりであることを痛感するでしょう。
小手先のセミナーで出し抜けるほどたやすい世界ではないことはすぐに実感するはずです。
セミナーでは、成功なさった行政書士の先生が「私もできたんだから、あなたにもきっとできます」なんてエールを贈ってきますが、私はそうは思いません。
営業方法は、人によって向き不向きがありますし、毎月払える広告費だって人それぞれです。
地域によるニーズの差もあります。
時代による差もあるので、なんとか軌道に乗った私ですが、その私の営業法でも、『たまたま平成23年に開業したから成功した』と思えるものもあります。
また、『波』というものもあります。
例えば、『放課後等デイサービスの指定申請』は、平成25年から始まり『バブル』とも呼ばれましたが、28年の前半には福岡の新規申請はほぼ終了したといっても過言ではありません(おそらく、全国的にも)。
また、行政書士にとって一番基本となる『車庫証明代行』でさえも、制度自体が大きく変わってきています。
つまり、他人の成功体験がそっくりそのまま自分に当てはめられることはないのです。
『努力半分、運半分』という世界かもしれません。
開業の現実
さて、このページは、別に、これから行政書士を目指される方の夢を潰すためにあえてネガティブなことを書いている訳ではありません。
ただ、現実は厳しいとお伝えしておきたいのです。
ちなみに、当行政書士事務所は、平成23年に開業し、6年目を迎えました(2017年3月時点)。
事業も軌道に乗り、個人的には、昨年、やっと結婚もしました!
ただし、開業後の数年はだいぶみじめな生活をしたので、ここではそのリアルな現実を包み隠さずお話ししたいと思います。
まず、私は、前職を退職し、アルバイトをしながら試験勉強を始めたのですが、そのアルバイトを、収入の不安により、行政書士の開業後も辞められませんでした。
とはいえ、自分の行政書士事務所の運営に支障をきたす訳にはいきませんので、バイトできる時間は早朝や土日です。
また、短時間でそれなりの収入を得なければなりませんので、肉体労働を選びました。
他人が休んでいる時間には肉体労働で汗をながし、平日の昼間は事務所にいても鳴らない電話を眺めるだけです。
他人の倍を働いても、「いつ事業が軌道に乗るのか」、「いつこの生活から解放されるのか」もわからず、心身がいつも疲れ切っていました。
国家試験に合格したり、行政書士会に所属したり、金バッジをつけたり、「先生」と呼ばれたりするから特別の存在に感じるかもしれませんが、行政書士とは単に『一人の事業主』でしかありません。
今日を食べていくお金があるのか、その責任を自分が一身に背負わなければなりません。
もちろん、軌道に乗れば幸せが待っていますが、『行政書士で開業しても幸せになれない』という結末があることも覚悟しておかなければなりません。
もし、上記のような甘い言葉で開業の夢を描いているのでしたら、もう一度、足元を見つめ直してください。
ただ、このブログの続きが、あなたが事業を軌道に乗せるヒントになればとは思っていますよ!