建設業許可の納税証明書

建設業で必要となる納税証明書とは何でしょう。実は、「納税証明書」と一言で言っても、種類がたくさんあります。

大まかには、国税、県税、市税というように分けられます。これは、発行する窓口が異なるということで、国税なら税務署、県税なら県税事務所です。行き間違えれば無駄足となります。なお、それらの税について、「納税額」の証明を受けるのか、「未納がないこと」の証明を受けるのかというように、何を証明してもらうのかを把握しておかなければなりません。

さて、建設業許可では、知事許可の場合、県税についての納税証明書を手配します。法人なら「法人事業税および地方特別法人税」、個人なら「個人事業税」です。なお、大臣許可の場合、国税の納税証明書となります。(地方特別法人税は2017年に廃止されます。)

ちなみに、同じ建設業の知事許可でも、公共工事の入札等の手続きでは、国税の証明書や、県税についても「未納のないこと」の証明が必要となりますので、たかが納税証明書ですが、行政書士としてはきちんと確認しながら業務を行いましょう。

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知事許可と大臣許可

建設業で必要となる納税証明書の覚え方としては、建設業における意味合いから覚えるのがよいでしょう。

例えば、福岡県知事許可は、福岡県内のみに営業所がある場合ものなので「県税」で足ります。一方、大臣許可は、福岡県以外にも営業所がある場合のものですので、福岡県税のみでは納税の実態として証明が不足するのです。そのため、「国税」において証明すると考えると覚えやすいでしょう。

以下、(大臣は割愛し)建設業の福岡県知事許可について記載させていただきます。

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個人建設業の納税証明書

さて、福岡県の建設業許可の手引きやネット等、情報が少ないと感じるのは個人事業で建設業許可を取得するケースです。前述において、「建設業許可申請における個人の印鑑は何を使えばいいの?」や「個人事業における建設業許可申請書の住所欄」というブログも掲載しましたが、個人の場合の申請は、法人の場合に比べ、とにかく情報が少ないのです。

まず、個人の建設業許可や決算変更届では「個人事業税」の納税証明書が必要になるのですが、実は、個人事業税の納税証明書が取得できる時期には時差があります。例えば、個人の会計年度は期末が12月31日となっており、その個人事業税については翌8月以降でないと納税証明書の発行を受けられません。そうなると、建設業許可では8月まで申請できないことになりますし、決算変更なら4月30日の提出期限に間に合わないとも考えられます。

この点につき、福岡の建設業では「提出時に取得できる最新の納税証明書を添付すればよい」ということになっており、これは必ずしも直近のものでないということになります。当然、添付する財務諸表の期間とリンクしない場合もあり得ます。

納税証明書

新規建設業許可の納税証明書

ここで、話を「新規の建設業」に移しましょう。

まず、新規の建設業では決算未到来のため納税証明書を添付できません。では、添付しなくてはいいのかというとそうではなく、代替えの書類を添付しなければなりません。

新設法人の場合、納税証明書に代えて法人設立届を添付します。この解説は、福岡県の建設業許可の手引きのみならず、ネット上でもたどり着きやすい情報です。ちなみに、法人設立届とは下図のような書面です。福岡県税事務所に提出したものの控えです。税務署や市税の税務届ではありませんし、ましてや法人設立の登記申請書の控えでもありません。

法人設立届

次に、個人で建設業許可を取得する場合の納税証明書です。

ちなみに、新規開業の個人が建設業許可を取得するケースはレアですが、取得が不可能ということはありません。また、個人の事業承継においては、建設業許可の再取得となりますので、親から引き継いだ息子さんが新規で建設業許可を取得することは少なからずご依頼を受けるところでもあります。

さて、個人の建設業許可の納税証明書について、福岡県の手引き等では解説を見かけません。代替えの書類はどうすればよいのでしょう。

結論から言うと、新規開業の個人が建設業許可を取得する場合、納税証明書の代わりに添付するのは、「個人事業税に係る開業報告書」です(下図)。ちなみに、この書面は都道府県によって名称が異なりますので、福岡県以外の方は「(新設法人と同様に)県税事務所に提出する税務届の控え」だとご理解ください。

個人事業税の届出

なお、たかがこれだけの結論ですが、福岡県の建設業許可申請の手引き等で見かけないため、初めての時は結論にたどり着くまでに多少の時間を要しました。

この書類は税理士の分野なので(行政書士の職域とおっしゃる方もおられますが)、正直、私は詳しくはありません。「新設法人と同様だろうな」とは予想していたものの、もしかすると法人と自然人では異なるのではとも考えました。例えば、新設法人の場合、まだ法人が存在していなかったので納税証明書が出ないことは明白ですが、個人の場合、開業はしてないものの、個人自体が存在していなかった訳ではありません。こう考えると、「納税額0円」とかで証明が出るのかなとも考えるところもありました。

まあ、あれこれ予想したりしましたが、福岡の建設業許可申請では、新規開業の個人は納税証明書に代えて「個人事業税に係る開業報告書」を添付するというのが結論です。

建設業許可申請の山口行政書士

③その他書類編