戸籍謄本(抄本)について

馴染みがありそうで意外と複雑な戸籍謄本。その基本事項を解説します。

行政書士

戸籍謄本の取得

まず、「戸籍謄本は何のインデックスを以て取得するのか」というと「本籍」と「筆頭者」です。これによって本人の戸籍を特定します。ここで、住民票のように「住所」「氏名」であればわかりやすいのですが、本籍・筆頭者というのは意外とわかりにくいものです。例えば、本籍がうろ覚えならば、事前に住民票で確認しなければなりません。

では、郵送で請求する場合にはどうなるかというと、2往復かかるのが原則となります(住民票の請求、戸籍の請求)。甘い窓口にならば、本籍を空欄にしていても、1往復の中で住民票と戸籍謄本を同時に交付してくれる窓口もあります。ただし、そもそも住民票と戸籍の請求先が同一とは限りませんので、住民票で本籍を確認してから戸籍謄本を取得するというのが原則であると考えておきましょう。

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戸籍のしくみ

相続において、亡くなられた方の「出生から死亡までの戸籍」が必要と言われるように、長く生きていればたいてい、1人の戸籍は複数になっています。この話は、いわゆる戸籍謄本(最新版である現在事項)しか取ったことのない方には何のこっちゃわからないところと思いますので、下記において戸籍の仕組みを解説します。ちなみに、戸籍謄本等は1通500円程度であり、高いもの(古いもの)なら800円程度です。何通にもなると意外と大きな出費になりますので、過不足なく取得するためにも概要を確認してください。

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戸籍は船に例えられます

出生

現制度では、1つの戸籍(船)に乗れるのは「家族2代まで」です。例えば、太郎さんが出生した場合、太郎さんは「父を筆頭者とする戸籍」に乗ります。「太郎さんを中心とした戸籍」ができる訳ではありません。

結婚・婚姻

そして、太郎さんは結婚すると、父の戸籍を降り、ようやく「自らを筆頭者とする戸籍」に乗ります。

出産

太郎さんに子どもができた場合についても同様です。「秀男君を中心として戸籍」ができるのではなく、「太郎さんを筆頭者とする戸籍」に秀男君が乗るのです。

抹消

秀男君が結婚した場合についても同様です。秀男君は「太郎さんの戸籍」を降りていくのです。

ここで、今度は、太郎さんの戸籍に注目してみましょう。注目すべきは、太郎さんの戸籍には「秀男君がいた事実」は消えないということです。抹消記録が残ることになります。

改正原戸籍

次に、その後、戸籍制度に改正があったとします。例えば、平成10年代に戸籍が手書きからコンピュータ化へ順次移行されていったケースです。その場合、②の戸籍が新しくなる(コンピュータ化される)訳ですが、注目すべきは、このとき引継がれる事項は「現在の事項」だけです。「過去に秀男君が戸籍に乗っていたこと(抹消記録)」は引継がれません。そして、ここで人生を終えた場合、太郎さんの「出生から死亡までの戸籍」は計3通(①、②、③)となるのです。

さて、前述の通り、最新の戸籍(③)には過去の記録(子どもがいること)は記載されていませんが、②を見れば子どもがいることが特定できます。相続なら、法定相続人を特定することになります。

また、別のケースとしても、離婚歴など、過去の情報が現在の戸籍に記載されていないことは多々あります。ただし、これらは、最新の戸籍だけを見た表面的な話に過ぎません。個人に関わる全ての戸籍を集めれば、過去の記録は消えないで残っています。

なお、戸籍制度には、いわゆる「家」と呼ばれた以前の制度もあります。「筆頭者」ではなく「戸主」を中心にした親子2代以上にまたがるものです。過去といっても、長寿の方の相続に関わると、今でも目にするものなので、行政書士ならそちらの戸籍の読み方も勉強しておかなければなりません。

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戸籍の種類

次のいずれかを請求できます。

  • 謄本(世帯全員のもの)
  • 抄本(世帯のうち誰かのもの)

ちなみに、上記②の戸籍の場合、戸籍謄本ならば、太郎さんのものでも、奥さんのものでも、秀男君のものでも同一のものです。秀男君の戸籍抄本といえば、「太郎さんを筆頭者とする戸籍に、秀男君に関する事項のみを記載する」という形になります(秀男君を筆頭者とする戸籍が取得できる訳ではありません)。

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除籍

抹消された過去の戸籍です。住民票の除票と異なり、抹消後5年で廃棄(請求不可)となることはありません。

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改正原戸籍

制度改正があった場合の旧版のことです(通称「ハラコ」と言います)。例えば、手書き版の戸籍がコンピュータ化された場合、手書き版が改製原戸籍(ハラコ)です。

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戸籍の附票

戸籍に記載されているのは「本籍」ですが、附票には「住所の変遷」が載っています。住民票について、例えば、相続人の住所が不明であれば請求するすべがありませんが、次のような順序を辿って取得することができるようになります。

被相続人の戸籍 → 相続人の戸籍の附票 → 相続人の住民票

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4章目次