実費と事務所の経理

いろいろな士業の先生とお仕事をしますが、経理のやり方は事務所によってそれぞれのようです。例えば、次のようなパターンがありますが、相手方の先生に臨機応変に合わせています。当然、お客様への請求金額(青色部分)は同じなので。

行政書士

経理①

経理①

Bの報酬がそもそもAの報酬であるパターンです。このような経理は、行政書士が他の行政書士に協力を依頼した場合に多いのではないでしょうか。例えば、A行政書士の公正証書遺言作成でB行政書士が証人の手伝いをしたり、A行政書士の許認可申請でB行政書士が図面作成等の手伝いをする等です。「そもそもAの報酬である」とは、Bの報酬がAの定めに準じていたり、Bがお客様に直接請求することが不自然だったりというようなことです。この場合、白色部分はAが外注費等として計上することになるでしょう。

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経理②

経理②

次に、AとBの報酬がそれぞれであるパターンです。このような経理は、行政書士が他士業に協力を依頼した場合でしょう。A行政書士の許認可申請に合わせてB司法書士の登記申請が必要になる等です。このような経理を上記①のように取扱ってしまうと、登記申請の報酬をA行政書士が一時的にでも受取ってしまうということであり、書き方によっては、職域的におかしな理屈を領収書に残してしまうことにもなりそうです。

また、お客様にとっては支払いが面倒になりますので(振込手数料も余計にご負担いただくので)、右のようにA行政書士が一括で支払いを受けて立替金で処理することもあるかもしれません(そうなった場合でも、Aの課税対象はAの売上高分です)。ただし、そうした場合、支払いの時期が一つになってしまうことには注意しなければなりません。例えば、「事業目的の追加等を司法書士にお願いし、その上で行政書士が許認可申請を行う」というようなこととなれば、司法書士と行政書士では業務の完了時期が数ヶ月異なることもあり得ます。Bに何ヶ月も入金を待たせることは、ともに働く士業としてあまりに空気が読めていませんし、経営主体が異なれば「ワントップサービス」というのは口で言うほど簡単なことではありません。

なお、上記のような話は、もちろん当事者同士によります。ここで正解を論ずるよりは、「支払いはどうしたらいいですか」「領収書のあて名はどうしたらいいですか」と一緒にお仕事をする先生と呼吸を合わせるのが賢明でしょう。

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経理と実費

少し話を小さくして、自分の事務所内の経理の話をしましょう。前ページで話題にあげた「実費の領収書の宛名」の件です。

実費の領収

例えば、申請代行の報酬が1万円で、申請手数料に500円かかった場合の経理です。行政書士の場合、実費(申請手数料等)は、建設業でも風営法関係でも車庫証明でも、福岡県の証紙で支払います。証紙を台紙に貼って「申請者(お客様)の住所・氏名」を記入して支払うので、所轄庁にお金を納める名義人はもちろんお客様です。支払いを代行する行政書士にとっては立替金でしかありません。経理においても、当然、立替金で処理し、当該実費の領収書はお客様にお渡しします。前ページで説明した登記簿のオンライン請求について、「支払い名義人名はお客様の名前にする」と説明した通りです。

ところで、司法書士の方とお仕事をすると、実費の取扱いの差を感じることがあります。というのは、司法書士の方によっては、実費の領収書について、お客様に対してコピーを渡していることがあるのです。士業にとっては立替金なので、むしろ、コピーを保管するのは士業ではないでしょうか(領収書の原本を受取るのがお客様)。

実費と立替金

仮に、上図の左のように、実費を事務所の売上高に計上するのが税務上正しくなさそうですし、上図の右のように、立替金として処理しているのならやはり領収書はお客様に原本をお返しすべきだと思います。司法書士の方は登録免許税を印紙等で支払うため(領収書にお客様の名前を記入しないため)、印紙が誰のものなのかというのをあまり意識することがないのでしょうか。

別に司法書士さんにケチをつける訳ではないですが、一緒に仕事をしたお客様に対して、かたや行政書士が領収書の原本をお返しして、かたや司法書士がコピーでは、バランス悪いなと気になってしまいます。

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4章目次