口コミは自然発生しない

さあ、前回に続き、具体的な営業方法の勉強をしましょう。

今回は、第二弾、『口コミ』です!

あなたの事業が、口コミを通じてどんどん広がっていくなんて、夢のようなことだと思いませんか。

口コミはテクニック

口コミについて、『まじめに仕事をしていればいつか評判になる』と思っていませんか?

ただ、よほどの偶然がない限り、まじめに仕事をしていても口コミは自然発生しません。

それどころ、あなたが、まじめに仕事をがんばればがんばるほど、口コミは遠ざかっていくのです。

 

さて、普通は、上記のように、口コミを『自然発生的な偶然』だと思うものです。

ですが、実は、口コミとは、そのような『偶然』ではなく、営業においては『テクニック』と位置づけられています。

ノウハウとして、たくさんの書籍も発行されていますよ。

つまり、口コミとは、発生を『コントロールする』ものなのです。

ポイント①

では、なぜ、口コミがコントロールできるのでしょう。

それは、口コミが、「誰かに伝えたい」という心理的なものだからです。

人間の心理・感情というのは、外部からのきっかけで左右することができるものなのです。

 

そこで登場する一つ目のポイントが『ギャップ』です。

例えば、あなたが転んでヒザをすりむいた時、そっとハンカチを差し出してくれた少年がいるとします。

その少年が『いつも優しい人』であれば「ありがとう」で終わる話です。

ですが、もし、その少年が『いつもはぶっきらぼうな不良少年』であれば、あなたは「あの人って本当は優しいのよ」と誰かに話したくなるはずです。

ニュースでは、『二股に割れた、セクシーな形の大根』が話題になりますし、テレビで『大盛りの店』、『汚いけどうまい店』、『狭過ぎる店』といった飲食店ばかりが取り上げられるのも、『意外性に話題性があるから』です。

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ポイント②

口コミの手法は、『ギャップ』以外にもあります。

それが、第二のポイント、『口コミのための鉄板ストーリー』というものです。

それは、『共感からの逆転劇』、『ベネフィット』、『社会性・悪役』の3点で構成される、下記のようなストーリーです。

共感からの逆転劇

まず『共感』というは、『お客様と気持ちを共有すること』です。

例えば、ニキビ薬のCMの『つかみ』を思い浮かべてください。

有名なタレントさんが、「実は、私もニキビで悩んでいました」と言って始まるのが定番です。

それを見た人は、「悩んでるのは私だけじゃないんだ」と安堵し、意外にも簡単に心を許してしまいます。

 

ちなみに、『共感』に用いるのは、できるだけどん底のエピソードにしましょう。

それが、『共感からの逆転劇』につながるからです。

人の心理は、『どん底からの逆転劇』に痛快さを感じます。

例えば、『ずっと治らなかったニキビ』が『この薬で治った』というストーリーを聞けば、「さすが!」と信用します。

映画だって、『絶体絶命のピンチ』から『悪を倒す』どんでん返しがあるから、めでたしめでたしなのです。

ベネフィット

次の『ベネフィット』というのは聞きなれない言葉かもしれませんが、『メリットのもう一歩先』のことをいいます。

例えば、ニキビが治るというのがメリットだとすると、ベネフィットとは何だと思いますか。

それは、ニキビが治ることによって間接的にもたらされる、『外見に自信が持てるようになった』とか『恋人ができた』などです。

ニキビに悩む人というのは、単にニキビを治したいというのではなく、本当の願いは、もっと深いところにあるのです。

 

他にも、例えば、儲け話の勧誘の場合、「お金が儲かりますよ」と言われるよりは、「お金があれば女の子にモテますよ」とか「お金があれば家族に孝行できますよ」と言われた方が、心を動かされるものです。

社会性と悪役

最後にダメ押しで登場するのが、『社会性と悪役』です。

 

社会性とは、例えば、「ニキビが原因で恋に臆病になっているあなたの味方です」などのセールストークのことです。

本来、ニキビ薬における本質は、『ニキビを治す』ということです。

ところが、そこに『恋に臆病になっている人の救済』という社会的なテーマがプラスされるとどうでしょう。

見ている人は、「この商品は社会の役に立とうとしている!」と錯覚してしまうのです。

人には、押し売りに対しては過敏に拒絶したくなる心理がある反面、『社会のため』とすり替えられると心酔までしてしまうこともあるのです。

 

また、悪役とは、『共通の敵が現れると、仲間意識が生まれる』という心理です。

ドラゴンボールで例えるなら、ベジータが現れれば悟空とピッコロが手を組みますし、フリーザが現れれば今度はベジータと悟空が手を組みます。

ニキビ薬で言うと、「今までいろんな商品を試したけど効果がなかったことはありませんか?」などのセールストークです。

『効果がなかったこれまでの商品』を共通の敵とすることで、「今度は、この商品を使って見返してやろうじゃないか!」という絆が生まれます。

この時点で、あなたはもう、CMを見ている側の人間ではありません。

製薬会社側に取り込まれてしまっています。

 

なお、この『悪役』という存在は、通常、都合よく周りにいるものではありません。

このため、無理やりにでも、この『悪』を作らなければなりません。

とはいえ、ライバル社を名指しで罵っていれば、あなたにも本当の敵が増えてしまいす。

そこで、『悪役』に、『当たり障りのない敵』を割り当てることが常套手段となります。

例えば、『国』や『社会』です。

行政書士の場合、「お役所が全然取り合ってくれなくてさー」とお客様が言っている時、「そうそう、お役所は頑固ですもんね」と返して、意気投合することがあるのではないでしょうか。

これは、一見、普通の日常会話ですが、実は、『お役所』というものを共通の敵とすることで、あなたとお客様の間の絆を深めているのです。

ポイント③

最後のポイントが、『第三者の評価』です。

これは、いわゆる『お客様の声』というものです。

 

まず、前述のとおり、人は『押し売り』が大嫌いです。

「うちの商品はいいですよ!」と力説されればされるほど、その商品を信用しません。

ところが、第三者が「あの商品はいいよ」と言うのを耳にすれば、たちまち信用してしまいます。

それを営業に取り入れたものが『お客様の声』です。

第三者の評価を載せることで、自分の商品の信用をアップさせるという口コミ手法になっています。

 

ちなみに、この『第三者』は、より権威のある人であったり、よりリアルであったり、ということが求められます。

例えば、『歯医者さんもオススメの歯ブラシ』とか、『○○株式会社の○○様の声』などです。

『Aさん』とか『40代男性』という書き方は、一歩間違うと『サクラ臭』が出てしまうので、使い方に注意です。

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本質ではなく『きっかけ』

このように勉強していくと、口コミという手法は、本当に『テクニック』だと感じます。

それは、いい意味でなく、『小手先のテクニック』ということです。

つまり、あなたをどう売るかという『見せ方』の工夫であり、あなたの『本質』ではないのです。

 

現に、ネット上にはこの口コミ手法を使ったあざとい商売があふれています。

例えば、『松本一志、引退』という見出しがあれば、思わずクリックしませんか?

それは、『釣り』とか『誘い見出し』言われるもので、クリックすればライターの思う壺です。

実際にクリックしてみたところ、松本一志さんが「才能が尽きたと思った時には引退すると思いますわー」と語っている普通のインタビュー記事だったり。

(別に、あなたが損をする訳ではありませんが、ライターの広告収入とかにつながったりします。)

 

事業は、『いかに食べていけるか』という戦場だと思うので、『自分を売り出すための話題性』として、私はそういう売り出し方を完全否定はしません。

ただ、覚えおかねばならないのは、口コミ手法は『本質』ではない点です。

上記の記事でも、結局、見出しはウソなのです。

出来上がってしまった『普通のインタビュー記事』を何とか読んでもらいたいがためにやったことが、『小手先のウソ』なのです。

口コミとは、あなたとお客様が出会う『きっかけ』として使う分にはいいでしょう。

その上で、『あなたの本質』はあなたが磨かなければならないことを覚えておいてください。

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伏線の回収

前述の行政書士の営業のページでお話しした『馬プラセンタ』のエピソードを覚えていますか?

ここで、私は、そのエピソードを「口コミの実践」と言いました。

ここまで勉強なさった皆様は、どこが口コミなのかは、もうおわかりだと思いますが、一応、答え合わせをしておきましょう。

正解は、『アメリカで袴姿(和装)で化粧品を売込んだ』という点が口コミ手法になります。

『ギャップ』を用いるという技です。

 

ちなみに、『アメリカで袴姿(和装)で化粧品を売込んだ』という点は、その社長が『対ハリウッド』として使った技です。

視点を変えると、社長が我々に対してもかましている口コミ手法があります。

それは、『ハリウッドでも愛用されている』という『第三者の評価』を用いて我々に商品を勧めている点です。

我々ラジオリスナーは、「ハリウッドでも愛用されているならいい商品ではないの?」と商品をつい信じてしまいます。

 

ところで、察しのよい方はお気づきかもしれませんが、実は、このブログも口コミを意識して書いています。

『行政書士で食べていけない時代があった⇒軌道に乗せた』という逆転劇でできています。

このため、始めからせっせと読んでくださっている方は、知らず知らずのうちに、私のことを信頼したり、好きになったりしているはずです。

「はずです」なんて自分で言って恥ずかしいので今度は下げますが、つまり、私という人間がすばらしいのではありません。

すばらしいのはこの『口コミ鉄板ストーリー』なのですよ!

 

もちろん、読者をだましたくて書いている訳ではないので、ウソは書いていません。

ただ、せっかく書くのですから、一人でも多くの方に読んでいだだきたい、楽しく最後まで読んでいただきたいという思いで、こういう技もちりばめているのですよー。

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どんな営業にも通ずる

さて、ここまで読んで、『口コミ』に対するイメージがだいぶ変わったのではないでしょうか。

『評判がどんどん広がっていく』というイメージだけでなく、『広告媒体に仕込むテクニック』としても使い勝手がいいことを学ばれたのではないでしょうか。

口コミは、『チラシ・コピーライティング』や『ホームページ』の文章にも活用できるものなのです。

また、昨今、『インスタ映え』という言葉があるのも、『ギャップ』の手法です。

口コミは、SNSなどの拡散型のツールを営業に活かしたいと思われる方にはもってこいの手法かもしれませんね。

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日常の行動にも通ずる

また、口コミというものは、営業だけでなく日頃の行動にも活用できます。

例えば、上記でも登場した、『いつも優しい人』よりも『たまに優しい不良少年』の方が好感を持たれるというようなことです。

つまり、『まじめ過ぎるほど損をする』ということです。

この理屈は、もちろん『ギャップ』という考えです。

 

さて、『まじめ過ぎてかえって損をしてしまう』という具体的なケースを見てみましょう。

例えば、お客様とのスケジュールの調整です。

通常5日かかる仕事について、まじめなあなたは、最大の努力を投じて「3日で終わらせます」と約束するとします。

あなたにとっては、『プライベートの時間も削って、超特急の3日で終わらせる』のです。

ただし、ここで3日で完了させた努力は、お客様にとっては、『3日かかる仕事が、3日で終わった』という当たり前の話でしかありません。

それどころか、逆に、4日かかってしまえば、お客様にとっては『ウソをつかれた』ということになります。

失敗してから「いや、本当は5日かかる仕事なんですよ」というのは、言い訳でしかありません。

もちろん、「5日で終わる仕事を、10日かかると言え」ということではありません。

ただ、『自分の設定するハードル次第で、お客様からの印象というのは変わる』ということです。

 

他にも、一人経営の行政書士事務所において24時間対応を掲げておられる方がいます。

ちなみに、私の事務所は、夜間に電話がつながらないことでクレームにはなりません。

なぜなら、24時間営業だとはどこにも掲げていないからです。

携帯電話を載せているので、もちろん、夜間に電話が鳴ることはありますが、お客様は「夜分にすみません」とか「時間外にすみません」と低姿勢でかけてくださるどころか、逆に、つながって感謝されることだってあります。

これも、自分のハードル設定によるところです。

 

そういえば、以前、司法書士の方から、こう言われました。

「私のポリシーは24時間営業!山口先生も24時間働かなきゃダメだよ~」と。

ところが、その方に18時過ぎに書類を届けたところ、「今日はもう飲んじゃって~。明日確認しときますね~」と翌日に回されてしまいました。

夕方に仕事を持ち込んだことは私の無礼ですが、あんな大風呂敷を広げられていたのでは、「24時間営業じゃないじゃん」とはなりますわな。

皆さんも、『ハードル設定』、大切にしてください。

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前後のトピック