車庫証明の代行は、簡単な業務ですが、実は意外と気が抜けません。
このページでは、車庫証明代行の特徴を踏まえ、業務の注意点を解説します。
なお、ここから2ページは、実務の話がメインになります。
実務の話を飛ばしたい方は、安い仕事は受けないのページへお進みください。
車庫証明の緊張感
車庫証明代行の特徴は、短期間で完結する業務であるため、スピードが求められ、独特の緊張感がある点です。
この独特の緊張感はどこから来るのかというと、その原因は、車庫証明の申請書類が県外のディーラー様と『郵送』でやり取りされることにあります。
これにより、次のようなストレスが増してきます。
- 時間がかかる印象がある
- 絶対にミスできない
※『車庫証明代行のお客様が、なぜ県外のディーラー様なのか』という話について来れていない方は、前述の車庫証明の代行業務の流れのページの解説へお戻りください。
①時間がかかる印象がある
さて、業務時間とは何でしょう。
行政書士にとっての業務時間は、『申請書類を受取ってから、車庫証明書を発送するまで』でだと思います。
一方、お客様が感じる時間は、『申請書類を送ってから、車庫証明書を受取るまで』ではないでしょうか。
また、車庫証明代行では、土日を挟む場合、土日に営業をしているディーラー様にとっては、さらに時間がかかったような印象を持つこともあるでしょう。
行政書士にとっては、警察署が閉庁なので、土日は動けなくて当然ではあるのですが。
当事務所は、「遅せぇーよ」とクレームを受けたことはありませんが、車庫証明代行ではいつも、最速で対応する配慮を行っています。
また、スケジュール的に、「最速の手続きができない」と判断した時は、思い切ってお断りすることもあります。
1万円が逃げていくということなので、『泣く泣く』ですが…。
ただ、早期の納車をめざしているお客様にとって、よその行政書士事務所に頼んだ方が早い場合は、それが『お客様にとっての幸せ』だと思います。
とにかく、車庫証明の代行で求められるのは、スピード感です!
②絶対にミスできない
上記①については、前述の車庫証明で飯を食うなのページでも触れた内容であり、今回の本題は、いよいよ、ここからです。
車庫証明が緊張するのは、『絶対にミスできない』という点です。
もちろん、業務でミスをしてはいけないのは、どの業務にも言えることです。
ただ、車庫証明代行では、それ以上に、特有のプレッシャーがあるのです。
その理由は、業務の進む順序があべこべである点です。
具体的には、車庫証明代行では、下記のように、『署名押印済みの白紙書類』が送られてくるという憂いを抱えています。
『建設業許可』など、福岡県内で受注する通常の許認可業務であれば、申請書類は、『行政書士が仕上げたもの』に対して、最終的に『お客様から署名押印をもらう』というのが順当な順序です。
ところが、車庫証明の代行では、それが逆なのです。
『署名押印だけが先に済まされ、他は空欄』という申請書が送られるケースがあるのです。
つまり、行政書士の業務としては、『1文字も間違えられない、手書き』を強いられるのです。
書き損じをすれば、ボツです!
ボツということは、『もう一度、お客様から押印をもらわなければならない』ということです。
そして、もう一度、押印をもらうにしても、お客様は福岡県外です。
その手戻りをしているうちに、『本来なら車庫証明が完了したであろう時間』が過ぎていきます…。
つまり、車庫証明代行のミスは、『取り返しがつかない』のです。
ついでに念を押しておきますが、車庫証明代行は、人間関係が、次の通り、多岐に渡ります。
ということは、例えば、申請書でミスをすれば、『ユーザー様の印鑑』が必要です。
また、使用承諾書でミスをすれば、『車庫の管理者の印鑑』が必要です。
しかも、最も恐ろしいのが、行政書士がそういうミスをした場合、『尻ぬぐいをするのは、ディーラー様』ということです。
ディーラー様にお願いして、ユーザー様や車庫の管理者から、再度、申請書類に押印をしてもらわなければならないのです。
…ああ、想像しただけで、身の毛もよだつ話です。
ちなみに、私はこんな悲劇的ミスを経験したことはないですよー。
なお、車庫証明申請書や使用承諾書は、必ずしも、上記のように、『押印以外、白紙』という状態で送られてくる訳ではありません。
ディーラー様によっては、『全て書込んだ申請書類』を送ってくださることもあります。
この時の安堵ったらないですねー。
申請書の確認を忘れずに
さて、車庫証明の申請書は、都道府県によって異なります。
福岡県では『複写式の4枚綴り』です。
ただ、私は見たことがありませんが、どうやら、『3枚綴り』の県もあるそうです。
この点について、申請書は、行政書士からディーラー様へ、「これに書いてください」と、わざわざ白紙のものを郵送することはありません。
ディーラー様は、各県でお手持ちの申請書を使います。
ここで、仮に福岡だと、『3枚綴り』を送られては申請できませんので、お使いの申請書が『4枚綴り』であることは、初めに必ず確認しておきましょう。
なお、申請書は都道府県によって書式がいろいろ異なりますが、当事務所では、『他県の4枚綴りで使えなかった』ということは今までにありません。
同様の業務
ちなみに、この業務手順は、パスポート申請代行も同様です。
なので、
「書き損じができないのは、パスポート申請代行も同じだろ」
「車庫証明だけが、特別に厳しいみたいに言うな」
と思われるかもしれませんが、実は、パスポート申請は、『本人の自署必須欄』以外については、多少の記載ミスは簡単に修正させてもらえたりします。
ちなみに、パスポートは、一度、書き損じたことがあるので、くしくも、経験上、知っています…(汗)
緊張感を和らげる制度
車庫証明代行には、上記のような緊張感がありますが、それを和らげる制度があります。
何年前だったか忘れましたが、『委任状があれば、行政書士の職印で車庫証明を申請できる』ようになりました。
ちなみに、車庫証明代行では、委任状は、このように、行政書士の職印で申請したり、行政書士が記入を訂正したりする場合に必要なものです。
訂正などの必要がないなら、申請代行に委任状は不要ですよ。
また、2015年8月より、使用承諾書についても、新たな制度が始まりました。
使用承諾書について、『福岡県で定められた様式を使用すると、主旨を損なわない範囲内での軽微な修正に限り、行政書士の職印による訂正ができる』という制度です。
その、『福岡県で定められた様式』を福岡県行政書士会から配布を受けたので、アップします。
ダウンロード、どうぞ。
なお、下記の様式は、当然ですが、福岡県の警察署でしか使えませんよー。
車庫証明の使用承諾書福岡県様式
代行はスムーズになったか?
では、上記の制度で、車庫証明代行はスムーズになったのでしょうか?
私は、その制度の恩恵をまったく感じていません。
というのも、なぜならば、わざわざ、この制度を使った申請をしたことがないからです。
上記で、「委任状による車庫証明申請が可能となったのが、いつのことだか覚えてない」と書いたのも、利用したことがないからというのが理由です。
もちろん、その間も車庫証明代行業務はたくさん行ってきましたよ。
ただ、何せ、お客様から、『わざわざ、委任状をもらうことがない』のです。
というか、車庫証明代行では、『委任状をもらうタイミング』がそもそもないのです。
まず、ディーラー様は、車庫証明代行を行政書士に依頼する段階で、既にユーザー様から署名押印をもらっていることがほとんどです。
それどころか、「先ほど、申請書類を先生宛にお送りしました。お願いしておきますね。」と、事後報告の電話をいただくこともあります。
そういう段階で、わざわざ「ユーザー様から委任状をもらってきてくれ」と、ディーラー様に言いますか?
新設された使用承諾書の福岡県新様式についても同様です。
それどころか、例えば、『東京のディーラー様』が、わざわざ『福岡県様式』を手配するという行動が、実務上あり得るのでしょうか?
あくまで、福岡県外のディーラー様を車庫証明代行のターゲットとしている私のケースですが、どうやら恩恵のない新制度ですね。