ここでは、当事務所が初めて車庫証明代行を受注した時のエピソードをお話しします。
その話は、単に私のエピソードとしてではなく、そのまま『車庫証明代行業務のやり方』に当てはめてお読みいただけます。
また、「食べていけない」と悩む、開業間もない行政書士の方にとっては、『行政書士の仕事の取り方』としても参考にしていただける内容となっています。
2011年に開業した当事務所ですが、開業当初は仕事が取れず苦難の日々。好転のきっかけとなったのが、この『車庫証明の代行』の出来事です。
このエピソードが、悩める行政書士の方の、何かのヒントになれば幸いです。
なお、以降、この章では、『車庫証明』という具体例を通して、『行政書士の開業』というテーマを広く考えられるような内容にしていきたいと思っています。
初めての車庫証明代行
さて、私が初めて車庫証明を受注したのは、行政書士として仕事が取れずにくすぶっていた、ちょうど『開業から1年を迎えた頃』のことでした。
当事務所のその時代といえば、前述の行政書士では食べていけない?のページで書いたような、悲惨な状況です。
そこでは、『開業後半年間の売上が、遺言作成1件の5万円』などの実態(失態)を公開した訳ですが、ついでにもう少し暴露しますと、『開業から1年経っても、まだまともに仕事が1件も取れていない』というのが私の状況でした…。
さて、こんな『営業力ゼロ』の私を変えたのが、1件の車庫証明代行の偶然の受任です。
その受任は、ある日、ディーラーを名乗る1本の電話が鳴ったことから始まります。
それまでの私は、個人客をターゲットに『相続のチラシをまく』という日々だったので、予期せぬ電話にしどろもどろ。それを再現するとこんな感じです。
客「東京の○○自動車ですが、先生に車庫証明の代行をお願いできますか?」
私「…え、あ、はい。」
客「料金はいくらですか?」
私「…い、1万円です。」
客「では、先生の事務所宛に書類お送りします。よろしくお願いします。失礼いたします。」
私「…し、失礼いたします。」
…ガシャン。電話を切って、、、まだピンと来ません。
「なぜ、東京のディーラーがうちに電話を…?」
「詐欺か…?」
「どんな書類が届くのか…?」
「何を準備しておけばいいのか…?」
「あ、しまった、相手の連絡先、聞いてない…」
とにかく待つことしかできない私のところに、翌日届いたのは、『完全に書き上げられた車庫証明申請書類一式』でした。
私は、ただただ、それを警察署に提出し、後日出来上がった車庫証明書をディーラー様に返送しました。
そして、ディーラー様から報酬が振り込まれました。
めでたしめでたし(笑)
行政書士としてたくさん仕事がいただけるようになった今となっては、こんなエピソードは、人に聞かせられたものじゃないエピソードです。
ただ、当時の私にとっては、たった一つのこの経験が、とても衝撃的な出来事でした。
なぜならば、この経験によって、私の『営業に対する考え方』が大きく変わり始めたからです!
説明の前に
ここで、以降の説明のために、用語を定義しておきます。
というのも、車庫証明代行は、上記のように、登場人物が複雑です。
行政書士にとって本来の依頼者は『車の購入者』のはずですが、車庫証明代行においては、本人に代わって、『車屋さん』が行政書士に依頼をするのが一般的だからです。
このため、以降の解説では、わかりやすいように、車の購入者を『ユーザー様』、行政書士に車庫証明代行を依頼する車屋さんを『ディーラー様』と呼ぶことにしますね。
代行を依頼してくれる人
では、いよいよ解説に入ります。
まず初めに申し上げますが、私のような『新参者の行政書士』にとって、車庫証明代行の仕事をくださるのは『ディーラー様』です。
もっと言うと、『県外の、ディーラー様』です。
当事務所は福岡県にありますが、ディーラー様とは、例えば『東京の車屋さん』です。
なお、「県内の業務は?」という疑問があるかもしれませんが、歴史の長い業務なので、老舗の行政書士事務所が牛耳っています。
割り込む余地はないと思ってください。
また、今どき、個人の方が行政書士に車庫証明を直接頼むケースはレアです。
仮にレアでないとしても、個人のニーズというのは『かたまり』ではありません。
例えば、あなたが路上でティッシュ配りをするとして、『自宅の前』よりは『駅前』で配るでしょう?
この『駅前』というニーズに当たるのが『県外のディーラー』です。
とにもかくにも、営業初心者の行政書士は、『県外のディーラー』にターゲットに絞るのが最もシンプルでしょう。
なお、上記で述べた『個人客はレア』というのは、『ディーラー様を通さず、個人が行政書士に直接依頼してくることがレア』という意味です。
ディーラー経由で入ってくる仕事において、『ユーザー様』自体は、個人の場合も法人の場合もありますよ。
車庫証明代行の業務
では、『ディーラー様が依頼をくれる』ということを前提に車庫証明業務を解説していきましょう。
ただ、実は、その説明は、ここで改めてする必要がありません。
というのも、前述のエピソードで全貌を解説済みだからです。
上記で述べた『初めての車庫証明代行』のエピソードこそが、『車庫証明代行業務の全貌』です。
つまり、車庫証明代行の業務は、次のような手順のみで完結します。
- 県外のディーラー様から電話が鳴る
- ふたつ返事で、書類が届く
- 行政書士は、それを警察署へ提出する
- 出来上がった車庫証明書をディーラー様へ返送する
- ディーラー様から報酬が振り込まれる
ちなみに、福岡では、申請受付けの締め時間が12:00となっています。
なので、例えば、24日の午後に提出するということは、25日の午前中に提出するのと同じ扱いになりますよ。
なお、プロとして、もう一つ押さえておきたい業務のポイントは、『領収証をもらう』ということです。
車庫証明の領収証は、申請時に2,200円、出来上がり時に550円、の2回を支払います。
そして、この領収証は、『言わないと、くれない』という警察署が多いです。
行政書士としては、この領収証を、お客様に『あげないよりは、あげた方がいい』ので、忘れずにもらっておきましょう。
難易度が上がるケース
なお、案件によっては、ディーラー様が、送付書類を100%そろえてくださっていない場合があります。
つまり、次のような事案を任されるケースがあります。
- 駐車場の使用承諾書の手配
- 図面の作成
- 所在証明の手配
- 希望ナンバーの取得
また、申請書についても、白紙のまま送ってくるディーラー様もおられます。
書き方がご不安でしたら、下記リンクを参照ください。
使用承諾書や図面
使用承諾書というのは、車庫を借りている場合の『使用権限の書類』です。
「私は、Aさんに車庫を貸しています」的なことが書かれた紙です。
さて、使用承諾書は、ディーラー様がユーザー様を通して手配してくれる場合もあれば、逆に、ディーラー様から行政書士に対して「そちら(福岡)で手配してよ」と頼まれる場合もあります。
車庫があるのが福岡なので、当然といえば当然の話です。
そうなれば、行政書士が、車庫の管理会社等へ使用承諾書を取りに行ったりもするでしょう。
次に、図面というのは、文字通り、『車庫の図面』です。
今どき、たいていの車庫は、GoogleMapで県外からでも見れるので、ディーラー様が作成してくださっている場合もあります。
とはいえ、行政書士が現地に行って書かされる場合も多いでしょう。
さて、図面を描く場合、注意するポイントがあります。
それは、ユーザー様にとって、我々行政書士は、「誰?」という存在であることです。
何故そうなるかというと、車庫証明代行というのは、行政書士とディーラー様の間の話だからです。
行政書士が、無断でユーザー様の敷地をウロウロしていれば『不審者』です。
図面を描くためにユーザー様の敷地に入る場合、ユーザー様宅に挨拶をしてから立ち入るのがいいでしょう。
また、その場合、事前に、「ユーザー様に、ご挨拶させていただきます」とディーラー様にも伝えておけば、なお良しです。
所在証明
次に、所在証明とは、『ユーザーが法人の場合』に発生しやすい話です。
例えば、上記のように、『法人の福岡支店』が車を買う場合でも、実際に車を購入するのは『法人の東京本店』というのが一般的です。
東京が本店の法人の場合、購入する『車の名義』も、『法人名(東京本店)』となります。
つまり、『福岡支店で使用する車を、東京本店が購入する』ということになります。
この場合、車庫証明の申請では、『所在証明』という手続きが必要になります。
車庫証明を審査する福岡の警察としては、「東京の会社が、どうやって福岡の車庫を使用するの?」という点を解明しなければならないからです。
なので、申請者は、「いやいや、福岡に支店があるんですよ!」と証明しなければなりません。
これが、所在証明です。
この場合、福岡支店の住所にひもづく『郵便物』や『公共料金の領収書』などを用意しなければなりません。
つまり、行政書士は、ディーラー様から、「所在証明を受け取りに行ってよ」と頼まれることがあるのです。
なお、取りに行くとは、『ユーザー様の、福岡支店へ』ということになります。
車庫証明書の受取り
さて、この通り申請を済ませると、2、3日後に車庫証明書が出来上がってきます。
車庫証明書をディーラー様へ納品する流れについては、次ページで説明しますね。
希望ナンバー
希望ナンバーについては、ブログを順番にお読みいただければ、後のページに解説を記載しています。
今すぐご覧になりたい方は、下記よりどうぞ。
車庫証明で自信をつけろ
車庫証明は、行政書士にとって、決して大きな仕事ではありません。
また、行政書士業全体をとらえると、『お勧めする業務』でもありません。
その理由の詳細は、後述の車庫証明では食べて行けないのページで説明するとします。
ただ、ここでお伝えしておきたいのは、『初心者の行政書士に限って言えば、実にお勧めしたい業務である』ということです。
なぜならば、車庫証明代行は行政書士の基本業務であり、『小さな仕事であるからこそ、許認可手続きの初心者にはうってつけ』だからです。
①達成感を得やすい
では、まずは、そのおすすめポイントのひとつ目をお伝えします。
それは、車庫証明代行が、いい意味で『小さな仕事』である点です。
小さい仕事であるからこそ、達成感がダイレクトに感じられます。
例えば、『建設業許可申請』なら、申請が済んでから2、3か月後に許可がおります。
許可がおりる頃には、苦労して申請したこともぼんやり忘れてしまっているものです。
一方、車庫証明は、期間が短いため、スピード感があり、成果がわかりやすいですよ。
②誇らしく思える
また、車庫証明は、実は、派手な一面もあります。
それは、『テレビで見るような大企業の手続きに当たる場合がある』ということです。
もともと、車庫証明を依頼してくださるディーラー様が『トヨタ』などの有名な会社であれば、行政書士としては、それだけでも誇らしく感じるでしょう。
それにもって、ユーザーも大企業となれば、さらに誇らしく感じられます。
企業名はあくまで例ですが、例えば、『レオパレスが、東京トヨタで車を購入した』というような車庫証明代行の案件に出会います。
一応言っておきますが、開業1年でくすぶっている行政書士であっても、そのような大企業と取引きできるのです!
もちろん、行政書士の直接の窓口は『ディーラーの営業担当者』なので、レオパレスやトヨタの社長とお会いすることはありません。
それでも、『レオパレスの福岡支店』や『福岡トヨタ』などの立派なオフィスビルへ足を運べば、『オレ、今、仕事している!』感でいっぱいになりますよ。
車庫証明の仕事の取り方
この車庫証明代行の1回の経験を皮切りに、当事務所の売上げは上向き始めました。
この翌月には、さらに多くの車庫証明代行の受任に至りました。
そして、皆様においては、お待ちかねのことと思いますが、いよいよその方法を公開します!
当ブログが、『他の高額なセミナー』よりも、『実際に行政書士業をやったこともないコンサル業者』よりも優れているところをお見せします!
現役の行政書士が、実際に行う具体的な営業方法を公開するのです!
では、その営業方法とは、、、
『ディーラー様へ、ダイレクトメールを送る』という方法です!
その方法に至る経緯を解説しますが、まず、上記の通り、私にとって『初めての車庫証明受注』は完全な偶然でした。
当時の私は、ホームページも公開していなかったので、ディーラー様は本当にたまたま、行政書士登録上の名簿か何かをご覧になり、お電話くださったのだと思います。
こんな『たまたまの業務』でしたが、やり遂げた私は、ひとつのことに気づいたのです。
それは、『自分が必要とされた』ということです。
これは、営業で言うところの『ニーズがある』ということではないでしょうか。
私はその時、『確かに、行政書士を探している人がいる!』という実感を初めて味わいました。
そして、「もっと車庫証明の仕事がしたい」と模索する私ですが、その時、さしあたって知っていることが一つだけありました。
それは、『東京のディーラー様は、福岡の行政書士を探している!』ということです。
なので、私は、さっそく東京のディーラー様宛てに、「福岡で車庫証明代行をお探しなら!」というダイレクトメールを送りました。
事務所のプリンタでチラシを作成し、自分でせっせと封筒に入れて、1万円分くらいを発送しました。
すると、、、『車庫証明3件+希望ナンバー1件』の受注を得ることができたのです!
1万円の営業費で、3万5千円くらいの収益です。
もちろん、これは、両手離しで喜べる金額ではありません。
ただし、私にとっては、これが初めての『広告費を投じて、確かに利益を生む』という経験でした。
行政書士の仕事の取り方
さて、上記の話は、文字にすれば他愛のない『車庫証明の受任』の話です。
皆様は、「じゃあ、今度は、行政書士の他の仕事の取り方も教えてよ!」と思うかもしれません。
ただ、ここで思い出してほしいのが、行政書士の営業のページでお伝えした『馬プラセンタ』のエピソードです。
つまり、営業力を身につけるというのは、『感覚』を身につけることです。
誰もあなたに『具体的な教示』はしてあげられないのです。
とはいえ、もうひとつだけ私から出せるヒントを絞り出せるとするならば、私がこの車庫証明の経験で得たものというのは、『ターゲットを絞る』という営業の本質に一歩近づいたことだと思います。
上記の話は、集客経験の低い方にとっては、『ダイレクトメールを送れ』というだけの具体論かもしれません。
ただし、聞く人によっては、『山口が、ターゲットを絞って営業できるようになった』と読み取るはずです。
チラシ・コピーライティングのページで書きましたが、『ターゲットを絞る』というのは『営業の基本』です。
そういう『営業の本質』に向かって、一進一退しながら経験を重ねることが営業なのです。
ちなみに、そうは言うものの、この車庫証明の仕事の取り方は、ある程度普遍的な『具体策』であるとも思います。
『東京-福岡』間というのは車庫証明のニーズ的には非常に恵まれた関係にあると思いますので、「あなたの地域でも同じように仕事が取れる」とは言いませんが、そっくりマネをして試してみると、多少の成果につながるかもしれませんよ。
なお、このページを読んで、「山口さん、営業方法を公開したら、あなたの仕事が減るよ」とか「同業のライバルに公開するなんて、疑わしい営業方法だぜ」と思われた方はいませんか?
そのような方には、後の車庫証明で飯を食うな!?のページにおいて、私が車庫証明の営業方法をネット公開したカラクリも書いていますので、ぜひ、先のページまでお読み進めてくださいね。
今思えばヤナセ
さて、前述の行政書士は食べていけない!?のページや、行政書士のWEB集客のページにおいて、ビジネスにおける『流れ』という話をしました。
ビジネスでは、『その時、その人が、瞬間的に享受するものがある』という話です。
それは『運』でもあり、『努力によって手繰り寄せるもの』でもあるという旨をお話ししました。
ここで言うと、車庫証明代行の『東京-福岡』間のニーズ量を考えると、私が『福岡で行政書士を開業した』という事実は、ひとつの『運』だと思います。
ただ、この受注が本当に『運だけ』だったかというと、私はそうではないと思っています。
というのも、実は、この車庫証明代行の『初ゲット』には、つかみ取るまでの序章があります。
さて、それは、この車庫証明の電話が鳴る数週間前の話です。
当事務所の郵便受けに、ヤナセ(外車ディーラー)からのチラシが入りました。
別に、行政書士事務所を狙ったポスティングではなく、ただただ無差別の『新車販売のポスティングチラシ』です。
ただ、私にとっては、ただのポスティングチラシでは終わらなかったという点が、この話のミソです。
当時、私は、行政書士として、「営業のとっかかりはないか」とギラついていました。
車のポスティングチラシを見て、『車庫証明』というキーワードは、頭をよぎりました。
さらに、ここにもう一つ『運命』を追加するなら、私は、そのヤナセに、オペルという外車に乗っていた時代にお世話になっていたという歴史がありました。
その親近感もあり、その時、「何か営業をかけるぞ」という勇気が湧いたのです。
そして、そのチラシに書かれた担当者に宛てて、車庫証明代行のダイレクトメール(DM)を送りました。
まあ、そのDMの結果自体は、『遥かなる凪』でした(笑)
私の行政書士業に、何の波風を立てることもなかったのです。
ただ、そのDMの結果はともかく、『そこで一度、車庫証明と向かい合った経験』は無駄ではなかったと自信を持って言えます。
なぜなら、初めての車庫証明の依頼の電話の中で、私がディーラー様から、唯一聞かれた具体的な質問を覚えていますか?
それは、「料金は、いくらですか?」です。
そして、私は、その質問に「1万円です」と即答できました。
また、ましてや、たじろいで「うちは、車庫証明はやっていません」と断ってしまう失敗も犯しませんでした。
すごく低レベルの話をしているのは百も承知ですが、当時の私にとっては、そのほんの数ミリの歯車のかみ合わせが『ターニングポイント』だったのです。
このページを、ただの『山口のエピソード』で済ますのも、『営業の本質と向き合うきっかけ』にするのもあなた次第ですが、私は、このページが、新人行政書士の方の何かのきっかけになれば幸いだと本当に思っています!
ちなみに、上記を読んで「車庫証明で1万円は高いぞ!」と思われた方は、後の安い仕事は受けない!?のページで、車庫証明の料金を例に、『行政書士の料金』というテーマをお話しします。
ブログの続きを楽しみにしてくださいね!