建設業許可申請において、専任技術者の実務経験の疎明では、『常勤性』が問われる部分があります。
福岡県の審査では、この常勤性を『年金加入記録(被保険者記録照会回答票)』によって疎明します。
2つの意味の常勤
ここで、『常勤性』といっても、実は2つの意味があります。
行政書士の方と話していても混同なされている方がいらっしゃるので、まずはそれを確認しておきましょう。
建設業許可では、上図のように、まず、『B:これから許可を取ろうとしている会社』があります(御社のことです)。
ここに経営管理責任者と専任技術者を『常勤として配置』しなければなりません。
この点において、『常勤として配置しているかどうか』という点は、現在の健康保険証(国民健康保険証)によって疎明します(この点を年金加入記録で疎明するのではありません)。
そして、Bに配置する専任技術者の要件を実務経験によって満たそうとする場合に、『A:経験を積んだ会社』での常勤性が問題になります(この常勤性を疎明するのが下図の年金加入記録です)。
ちなみに、経営管理者の経営経験は必ずしも『常勤での経験』が求められる訳ではありませんので、経営経験の疎明のために年金加入記録の添付は不要です
年金加入記録のポイント
では、常勤性を示すには(常勤であったと認められるには)、年金加入記録にどのように記載されていなければならないのでしょう。
まず、年金加入記録には、厚生年金の場合、『勤務していたた会社名』が記載されています。
つまり、ここに記載されてある会社名によって、『この会社に確かに勤務していた』と判断することになります。
個人事業での常勤性
ただし、年金加入記録に会社名が記載されてくるのは加入歴が厚生年金の場合です。
加入歴が国民年金の場合、会社名は記載されず、『国民年金に加入していた』という旨の記載しかされません。
おおむね、個人事業の場合、どこの会社に所属していたのかということは年金加入記録からは判断できません。
ただし、加入歴が国民年金である場合、福岡県の建設業許可申請では、『他の会社に勤めていた訳ではない』とみなされ、『個人事業を行っていた』として、消極的に常勤性を疎明できることとなっています。
なお、国民年金を滞納している場合も、同様にこのケースとなります。
(常勤性については、都道府県により、審査にはだいぶ差があると思われます。)
本来より遅く加入
厚生年金の場合、年金加入記録を見れば所属会社は一目瞭然ですが、この点が逆にあだとなることがあります。
例えば、『2000年に会社を設立したけど、社会保険に加入したのは2010年から』というようなケースです。
年金加入記録だけを判断すれば、常勤にカウントできるのが2010年からとなってしまいます。
この点において、福岡県の審査では『会社として送れて加入した場合はOK(2000年から常勤として勤務していれば2000年からカウントできる)』となっています。
逆に、『会社として2000年から加入しているが、当該個人が2010年から加入した』というケースは、2010年からカウントしなければならないそうです。
私は、『会社として送れて加入した』というケースに当たったことがあり、その旨説明をしたところ、特段、別途の疎明資料を求められることはありませんでした。
当該個人が遅れて加入したというケースには当たったことがないので、何とも言えませんが、『会社として遅れて加入した』と『当該個人が遅れて加入した』というのをどうやって切り分けるのかは謎です。
未成年の年金加入記録
年金加入記録によって常勤性を示す方法では、さらに不明確な点があります。
それは、未成年の間の記録です。
年金は20歳からの制度なので、当然、年金加入記録にも20歳以降の記録しか残っていません。
一方、建設業では、中学卒、高校卒で働く人も少なくありません。
この点について、福岡の建設業許可審査では、未成年時の実務経験を疎明することはかなりハードルの高い手続きとなります。
実際、専技の実務経験では、『高卒歴+実務経験5年』のように高卒後の実務経験が想定されているはずなので解せないですが、未成年時の実務経験の疎明はかなり難しいと思われます(一応、不可ではありませんが)。