複数業種の同時取得

建設業許可の29の工事種別(業種)において、複数の種別を取得したいケースもあると思います。

例えば、『土木』と『ほ装』の2つを取りたい、のようなケースです。

そこで、一般建設業許可申請において複数の業種を取得するケースについて記載します。

そもそも取得可能か?

初めて建設業許可申請をする方は、そもそも、この点から不安だと思いますので一応説明しておきますが、建設業許可は『複数の業種を取得することが可能』です。

そして、それは、『新規の申請でも可能』です。

これから新規で建設業許可を取るという方が、一気に『土木』と『ほ装』など、2つ以上の業種を取得することができます。

 

複数取得の費用

では、複数の業種を取りたいとして、まずクリアにしておきたいポイントは「費用が倍かかるんじゃないか?」という不安です。

一般建設業許可は、都道府県に収める9万円の申請手数料があり、それが倍々でかかるなら、いくつもの業種で取得するのは大変な負担だからです。

この点につきまして、1回の申請で同時に取得する場合でも、申請手数料は変わりません。

つまり、『土木』だけ取る場合でも、『土木』と『ほ装』の2つを取る場合でも、29業種取る場合でも、9万円です。

ただし、念を押しておきますが、これはあくまで『1回の申請で同時に取得する場合』の話です。

既に建設業許可をお持ちの方が『業種追加』の申請をする場合は、その都度、申請手数料がかかります。

業種追加につきましては、先のページにて説明します。

 

複数取得の経営管理者

ここで、いよいよ『御社が複数取得できるのか?』という要件を確認していきます。

そのポイントは、経営管理者と専任技術者です。

 

まず、経営管理責任者とは、簡単に言うと、『建設業の経営経験のある者』のことです。

『経営経験があるかどうか』については、『これまで経営してきた業種』と『許可取得したい業種』が同じか・異なるかに応じて、おおむね、次のいずれかの経験を満たさなくてはなりません。

  • 同業種5年以上
  • 異業種6年以上

ここで、行政書士でも意外と誤解なさっている方がおられますが、『複数の業種を取る場合は6年以上』という解釈は誤りです。

例えば、『内装仕上』と『板金』を5年間営んでこられた方は、5年間の経営経験で『内装仕上』と『板金』の経営管理者になり得ます(2業種を取得するための経管になり得ます)。

異業種6年というのは、『内装仕上』の経営経験のみで『内装仕上』と『板金』を取得しようとするから6年が必要になるのです。

 

ただし、上記はあくまで理論上の話であり、実務上どこまで可能なのかは難しいところです。

というのも、経営経験については、その『疎明』という手続きがやっかいだからです。

1業種分(例えば、内装仕上)の疎明資料しか整備できないというケースは当たり前にあり得るので、結果的に『複数の業種なら6年』と解釈してしまうところはあるでしょう。

また、上記はたまたま2つを想定しておりますが、例えば、16業種を取得したいと思えば、『5年間の16業種の経営経験』を疎明するよりは、『6年間の1業種』を疎明する方があきらかに現実的ですね。

 

異業種6年の要件

ところで、経営管理責任者の要件についてまじまじと読んでみるとと、少しドキッとする言い回しがあります。

それは、異業種6年以上の経営経験の要件について、

許可を受けようとする建設業以外の建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者

と書かれている点です。

『経営業務の管理責任者としての経験』という書き方は、『実際に許可を取得した上で、経営管理者としての経験』という意味にも読めてしまいます。

つまり、これだけ見ると、「新規の建設業許可申請において、この要件は適用されないのではないか?」「新規の許可申請では、同時に複数の業種が取得できないのではないか?」と不安になってきます。

ただし、この解釈について実際は、既に建設業許可を持っているか否かは問わず、経営経験が6年以上あれば、新規でも複数業種の経営管理者になれます(新規で複数業種を取得することが可能です)。

 

専任技術者

複数業種を取得する場合、最もネックになるのが『専任技術者』についてです。

例えば、『土木』の業種を取るなら『土木工事の要件を満たす専任技術者』を、『舗装』の業種を取るなら『舗装工事の要件を満たす専任技術者』を配置しなければなりません。

取りたい業種について、『要件を満たす技術者が御社にいるのか?』というのが最大のポイントになります。

 

さて、専任技術者の要件を満たすには、大きく分けると、次の2つの方法があります。

  • 10年以上の実務経験
  • 資格

(指定学科の高校・大学の卒業歴があれば実務経験年数が緩和され、逆に、資格によっては資格+実務経験も必要になるものがあります。)

 

ここで、実務経験で許可を取得する場合、『10年間で認められるのは1業種のみ』であることにご注意ください。

例えば、10年間の中で『土木』と『舗装』の両方に従事してきたとしても、その10年はいずれか一方の実務経験にしか算定できません。

つまり、複数の工事業の許可を取得するには20年とか30年の実務経験が必要になり、『実務経験によって複数業種を取得する』というのはなかなか現実的な話ではありません。

 

そこで、複数の建設業許可を取る場合、実務経験よりも『資格』という方法が望ましいと考えられるでしょう。

土木施工管理技士

例えば、上記の『2級土木管理技士』という資格をお持ちであれば、『土木』『とび・土工』『石』『鋼構造物』『ほ装』『しゅんせつ』『水道施設』の7業種の専任技術者になることができます(7業種の許可が取得できます)。

 

1人で複数の技術者に

さて、ここで湧き起るのは、例えば、Aさんが2級土木管理技士の資格を持っているとして、『Aさん1人で複数の工事の専任技術者になれるのか?』、それとも、『Aさんが専任技術者になれるのは、上記7業種のうちのいずれか1つか?』という疑問です。

この答えとしては、前者が正解になります(1人で複数業種の専任技術者になれます)。

ちなみに、その場合、建設業許可申請書の『専任技術者一覧表』についてどのように書くかというのを、下記に掲載しておきます。

専任技術者一覧表

なお、上記の他にも、例えば『一級建築施工管理技士』という資格では、16業種の建設業許可が取得できたりします。

ただし、取れるからといって、実際に使用しない許可まで取得するのは望ましくないでしょう。

実績のない建設業許可をだらだらと持っていれば、決算変更届など、許可後の手続きが面倒になることもあるでしょう。

建設業許可申請代行

 

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