行政書士は食べていけない?

このページでは、「行政書士って食べていけるの?」という疑問に体験談でお答えします。

当事務所は平成28年9月で、個人的には開業6年目には結婚も果たし、今では2児の父です。

ただ、今でこそ順風満帆ではありますが、開業当初は、私も「食べていけない日々」を過ごしました。

開業とは

行政書士は、「食べていけない」とも言われています。

私も、実際『食べていけない時期』を過ごし、お恥ずかしい話、開業から数年はアルバイトとの掛け持ちでした。

事務所では鳴らない電話を待ち続け、早朝や土日は肉体労働のバイトをしていたことは前述のとおりです。

バイトで稼いだお金を行政書士業につぎ込み、それでも足りず、貯金は底を尽きかけました。

毎日、「もうダメかもしれない」と思い、食欲もなくなるし、眠れない夜もありました。

実際、今でも、その『ダメ』という方の未来を歩いていた可能性だってあります。

開業するということは『個人事業主』になるということですので、『○年かんばれば成功が約束されている』ということなどありません。

つまり、『自分ががんばらなきゃ食べていけない』。

それが『開業』ということです。

行政書士だけでなく、弁護士でも、医者でも、事業を軌道に乗せられなければ、食べていけません。

別に、資格業に限った話でもありません。

ケーキ屋でも、ラーメン屋でも、事業に失敗すれば食べていけませんし、逆に、成功すれば食べていけるのです。

行政書士が食べていけないのではなく、センス・能力・運など、『勝利』をつかまなければ食べていけないのです。

行政書士

行政書士の状況

「いやいや、そんな一般論は…」とおっしゃるのもごもっともですが、実際、開業なんてそんなものです。

『食べていけるか・いけないか』なんて、やってみないとわかりません。

とはいえ、このブログへたどり着いた方は、『行政書士で開業した場合の現実』をきっとお知りになりたいのだと思います。

こちらとしても、「やってみなけりゃわからない」という一言で終わるつもりはありません。

ここでは、私の中のありったけの『行政書士の開業秘話』をブログにしていますので、隅々まで読んで何かのヒントにしていただければ幸いです。

なお、この先のページでは、当事務所の集客の極意も公開していますし、私が仕事が取れるようになったエピソードもブログにしていますよ。

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行政書士資格の現実

人は、普通、自分のみじめな姿を他人には隠したいものです。

まして、ライバルに対しては、なおさらです。

つまり、どんなに仲が良い行政書士同士でも、商業圏を同じくする同業者から本音を聞くことはとても難しいことです。

ただし、私は、行政書士を目指される皆様のために、『開業当初の行政書士の現実』を腹を割って話したいと思います。

一応、『事業が軌道に乗った』という余裕もありますし。

「このサイトを見つけてラッキーだった!」と思ってもらえるように、私、がんばって書きますね!

では、開業当初の行政書士の現実とはどのような状態かというと、『初めはずっと仕事ゼロだよー』です。

「それはお前の努力不足だろ」とツッコミが入るかもしれませんが、士業というのは特別な業種なので、『1件の仕事』を取るのが、本当に大変なのです。

例えば、新しい土地で「明日、必ず、車庫証明の仕事を1件とってこい」と言われたら、それは、ベテランの行政書士でも難しい話です。

士業というのは、人とのつながりを広げたり、さまざまなアンテナを張ったりする中で、ようやくニーズのあるお客様と出会い、仕事が得られるものです。

『パン』、『うどん』、それこそ『車』でも、隣のお宅をピンポンして土下座して頼み込めば、買ってもらえる可能性はゼロではありません。

ただ、行政書士の、『車庫証明』や『建設業許可申請』や『相続』というのは、そういう事情が発生していない人にとっては、本当に、ニーズがゼロなのです。

そして、「じゃあ、どうやったらニーズがある人に出会えるの?」という点は、初めて起業する人にとってはとても難しい課題になります。

資格をとっただけではお客はとれませんし、行政書士会が仕事を支給してくれる訳でもありません。

開業当初は、「仕事がとれない」と悩み、その答えを見つけられなければ、数年で廃業を考えるでしょう。

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開業当初の当事務所

さて、当事務所の開業当初の状況をお話ししましょう。

当事務所は、開業時、たまたま知り合いから『会計記帳の顧問契約』の仕事をいただきました。

それ1件では事務所の家賃にも満たない額ですが、『毎月、お金が入ること』、『毎月、行政書士という顔を持てること』で、食べていけず崩れそうなプライドを、どれだけ支えてもらったでしょう。

本当にありがたいことです。

だたし、その受任は単なるラッキーです。

私の営業力ではありません。

つまり、その他は、相変わらず『仕事がない毎日』が続きました。

ついでに、開業後半年の当事務所の売上も暴露しておきます。

半年間で5万円です…。

私は、開業後、相続関係の業務をやっていました。

いや、売上をあげていないので、「やっていました」というのもおこがましいですが…。

そこで、ある一人のおばあさんが私のことを気に入ってくださり、遺言作成を1件受任しました。

それが、半年間で唯一の売上です。

ただし、その遺言作成はというと、行政書士としてまともな仕事ではありませんでした。

「死ぬ前に、お嫁さんへの恨み言をたらふくしたためたい」という、いわば『遺書』です。

遺産をどうするなどの話は何もありません。

こちらとしても、そんなことでお金をいただく訳にはいきませんので、「勝手に自分で書いといてー」という旨、何度もお断りしました。

ただ、話を聞くと、どうやら私に対し、「あなたに、お金をあげたい」と、思ってくださっているようでした。

高齢で孤独になった寂しさが私と話して紛れたのか、セミナーをしている私の姿に熱いものを感じたのか、それとも私が孫にでも見えたのか、おばあさんの気持ちはわかりませんが、とにかく私に対してお金をあげる口実として「何かしてもらおう」と思っているようでした。

当時、激貧だった私は、その優しさに甘えて、遺書をしたため、5万円をいただきました。

その後、その方が施設に入られるまで、何度も伺って話し相手になってあげました。

ただし、これが行政書士のまっとうな売上と言えるでしょうか。

仮にそう言えたとして、その5万円を得るために投じた広告費がいくらだと思いますか。

半年間で、18万円(3万円×6か月)です。

…これでは、ビジネスとして体を成していません。

ここから何かが変わるとも思えないこの『地獄の日々』が好転していく過程は、先のブログをお楽しみにしてください!

他の行政書士は

ちなみに、私のこのエピソードを聞いて、「お前がしょぼいだけじゃないの?」と思われるかもしれません。

そこで、私の『立ち位置』的なことを、私が感じたなりに言わせていただきますが、こんな私でも『士業の中では、よくやれた方だ』と思います。

周りを見渡しても、『食べていけない士業』は多いです。

また、前述の事務所を借りるなのページで述べましたが、私は、レンタル事務所から自宅兼事務所へ撤退を経験したことがあります。

その際、移転には『福岡県行政書士会の事務所再調査』が必要になるのですが、調査にいらっしゃった支部長からも『士業の厳しい現実』をそれとなく伝えられたのを覚えています。

当時の支部長は人情家で、私のことを大変心配してくださいました。

その頃の私としては、『行政書士としてやっと仕事が取れるようになってきた頃』であり、撤退は、『ネガティブ半分、ポジティブ半分』という気持ちでした。

そんな状況をお伝えし、一応、毎月の会計顧問契約も1件持っていたので、そのことを話した時に支部長から聞いた言葉が印象的でした。

「とりあえず、山口君は、毎月、事件簿に書くことがあってよかった」という言葉です。

そこで、私は、『毎月、事件簿に書くことがない行政書士がざらにいる』という事実を知りました。

まあ、『知りました』というよりは、それまでも『だろうな』とは思っていたのですが。

ちなみに、これから行政書士になる方に注釈しておきますが、行政書士は、受任した案件を、事件簿という用紙に記録しなければなりません。

『事件簿に書くことがない』とは、『仕事がない』ということです。

つまり、開業時の苦難は私に限った話ではなく、『毎月、仕事ゼロ』がたくさんいるというのが、新人行政書士の現実だと思いますよ。

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士業は特殊な業種

さて、『仕事ゼロは不幸』。それは紛れもない事実です。

例えば、飲食店なら開業するだけで誰かがふらっと食べに入るでしょう。

これを考えると、特殊な業務を扱う行政書士業の宿命を憂いたくなります。

ただし、「行政書士の開業が、飲食業など他の職業よりも不幸か?」といえば、実はそうとも言い切れません。

なぜなら、事業において根本的な問題は、『お客様が0か1か』ということではなく、ざっくり言えば、『赤字か黒字か』ということだからです。

毎日100人が来店しようが、毎月の売上げが1千万円だろうが、赤字であれば、遅かれ早かれ廃業の時を迎えます。

『忙しい』という事実は、自己満足でしかありません。

それから比べると、行政書士は、逆に、『維持費があまりかからない』という強みがあります。

大きな借金をしなくても、ある程度の自己資金で開業できます。

毎日、何万円という仕入を抱える訳でもありません。

少しの経費と生活費を何とかできれば、とりあえず、『開業直後に廃業』ということにはなりません。

開業当初の私のように、『バイトと掛け持ちをする』という生き延び方もあるでしょう。

まぁ、誇れたものではありませんが…。

ちなみに、当事務所は『公庫の融資業務』を受任することがありますが、それにおける新創業融資制度では、『融資を受けられる運転資金の上限』は3か月分程度となっています。

つまり、世の中には、売り上げがふるわなければ『開業3ヶ月で廃業』という業種がざらにあるのです。

どんな経営者も、『経営能力を身に付けるまでに時間がかかる』とすれば、チャレンジできる期間の長い士業という業種は、恵まれていると言っても過言ではないと思います。

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